税金マル得情報 vol.116「役員報酬の増額と役員退職給与の関係」

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1.退職給与の計算を考えての増額
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社長などが数年後に退職予定の場合、「役員退職給与の基本的な計算方法が『最終報酬月額×在任年数×功績倍率』だから、今から役員報酬を増額しておきたい」、「いくらまでの増額ならば税務上の問題がないか?」というご質問を頂くことがあります。
過大役員報酬の数値基準はありませんが、①職務内容、②法人の収益状況、③従業員給与の支給状況、④同程度の規模の同業他社の役員報酬の状況などにより判断することになっています。
ちなみに、大分地裁(平成20年12月1日判決)では、「役員報酬の月額:200万円」に対して、
「国税と裁判所が認定した適正な役員報酬の月額:130万円」となっており、この程度の乖離でも「過大額」と判断されているのです。
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2.社長の職務内容からの主張
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国税不服審判所の裁決(平成29年4月25日)をみてみましょう。この事例では社長の役員報酬(5期分)が問題になりました。国税は各期における同業他社の「最高額」を超える部分を否認し、国税不服審判所で争われましたが、次のとおり判断されて納税者の主張は認められませんでした。
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〇 社長の職務内容は事業内容に沿うものであり、中古自動車の卸売業を営む法人の代表取締役として一般的に想定される範囲内のものである。
〇 社長の職務内容は特別に高額な役員報酬を支給すべきものとは評価できない。
〇 法人の収益はおおむね一定である。
〇 従業員の給料もおおむね一定である。
〇 同業他社の役員報酬と比べても高額である。
〇 問題になっている社長の役員報酬の推移は平成22年7月期を「1」とすると、
「平成23年7月期:約2.3倍」、「平成24年7月期:約3.3倍」、「平成25年7月期:約3.9倍」、
「平成26年7月期:4倍」、「平成27年7月期:約4.3倍」と高い伸び率となっている。
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以上の理由により、各事業年度における同業他社の「最高額」を超える部分は損金不算入となったのでした。
ちなみに、納税者は「代表者の職務の内容は、法人の事業全般にわたるものであるから、高額でも問題ない」と主張しましたが、
国税不服審判所は「職務の内容が法人の事業全般にわたることは一般的なこと」と判断し、この主張は認められませんでした。
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3.役員報酬の増額をどう考えるのか?
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役員報酬の適正額は先述の①~④などで判断される訳ですが、中小企業の場合は同族役員の役員報酬のみを突出して上げることもある訳です。
ただし、会社の業績がいい状況においても③の従業員の給与も同様に上げていくことは難しいでしょう。
そういう意味では最低でも②の「法人の収益状況」を根拠に説明したいところです。
もちろん、収益が上がらなければ、役員報酬を増額できない訳ではありません。
現状の収益から判断すると、本来の適正な役員報酬は200万円なのに、100万円しか支給していないこともあるからです。
このような場合は法人の収益が一定の推移でも、増額することは認められます。
4.役員報酬の増額と最終報酬月額
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裁判等で認められるかは別にして、退職前の数年間で増額した金額を最終報酬月額にすることには確実に否認リスクがあります。
これが否認されれば、「過大役員報酬」と「過大役員退職給与」というダブルでの否認がされますので、納税額も多額になる可能性があります。
ご注意頂ければと思います。