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- 2024年12月10日
税金マル得情報vol.112「親が子供にお金を貸す相続税対策」
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「親が子供にお金を貸す相続税対策」
1.よくある相続税の納税資金の問題
中小企業のオーナーや地主の方などの相続問題の1つに「金融資産以外の資産額」が「金融資産の額」よりも多額になっているため、被相続人の金融資産で相続税を払いきれないというものがあります。これが中小企業の事業承継問題にもなっていたので、事業承継税制ができた訳です。地主の方の場合は相続が起きるたびに相続人は土地を売却し、先祖代々の土地が徐々に減っていくことになる訳です。
ということは、相続人名義の預貯金が十分にあれば、事業承継税制は関係なく、後継者に株式を承継させることができるのです。また、相続人は先祖代々の土地を売らずに、土地を守っていける訳です。
2.親が子供にお金を貸す対策
たとえば、父親の預貯金が2億円あったとします。このうち、1億円を子供に貸し、子供はこの1億円を運用します。年利率:5%(半年ごとの複利、複利ごとに20.315%の課税)、相続開始までの投資年数を20年間とすると、20年後に1億円は税引き「後」の元利合計で約2億2,000万円になっています。
20年後の相続において貸付金(相続財産)1億円を子供が相続し、父親が富裕層で子供が55%の相続税を払ったとしても5,500万円の納税です。この納税額は父親の財産が預貯金1億円でも貸付金1億円でも変わりません。
そして、父親から子供への貸付金(相続財産)は債務者である子供が相続し、1人の人物の中で債権者と債務者が合体するので返済不要となります。
そして、投資残高は2億2,000万円ありますので、これを相続税の納税資金に充てることができるのです。父親の相続財産が預貯金1億円なのか?貸付金1億円なのか?により、大きな違いが出るのです。
3.ドル建保険や変額保険という選択も
投資信託や株式運用などには抵抗がある方も多いでしょう。そういう方の場合はドル建てや変額保険はいかがでしょうか?たとえば、子供が借りた1億円を一時払いの保険料に充てたとします。これが父親の死亡保険金3億円になって入金されたとします。この場合の計算は次のとおりとなります(概算)。保険料を子供が払い、子供に死亡保険金が入金されているので、死亡保険金に対する税金は所得税・住民税となります(一時所得で利益の2分の1に課税)。
(1)死亡保険金3億円-保険料1億円=利益2億円
(2)課税所得:2億円×1/2=1億円
(3)所得税・住民税:1億円×55%=5,500万円
(4)貸付金に対する相続税:5,000万円
(5)税引き後の手取額:3億円-5,500万円-5,000万円=1億9,500万円
父親が子供にお金を貸さずに相続税5,500万円を子供が納税した場合の税引き後の手取額は4,500万円ですから、生命保険に加入した場合と比べて1億5,000万円もの差が出るのです。
4.多くの方が預貯金を遺して他界する問題
しかし、多くの方がこのような対策をしないで他界されます。それでは相続を繰り返すごとにドンドン金融資産が減っていってしまいます。投資信託や株式などの運用であれ、生命保険を活用した対策であれ、預貯金をそのままにしておくのではなく、子供に貸すという相続税対策を検討されてはいかがでしょうか?なお、この対策は祖父母が孫にお金を貸すという相続税対策にも応用ができますので、専門家に相談した上で検討してみましょう。